2011年07月12日

父と暮らせば  井上ひさし追悼例会





2か月に1度の

静岡市民劇場の例会は、毎回、

上質な舞台を提供して下さいます。


今回は、

こまつ座の『父と暮らせば』を拝見いたしました。


原爆投下から3年たった広島。

市立図書館に勤める福吉美津江(栗田桃子・文学座)は、たった一人で住んでいました。

静かに暮らしていた美津江の心には

図書館で出会ったある青年への淡い思いが芽生え、

かすかな変化の兆しが・・・



と、そこへ、

突然、父の竹造(辻萬長・こまつ座)が現れ


美津江の恋を応援するために

そして、何くれとなくお世話をします。

しかし、美津江は

『うちは幸せになってはいけんのじゃ』と自分を強く押さえつけるように言い放ちます。






前半は、

父親と娘のほのぼのとした会話や

娘が作るお料理が台詞を通して香りとなって伝わってきたり

微笑ましい光景もたくさんありました。



二人芝居ですが、

台詞で攻めてくるタイプの舞台ではなく

静かな流れの中で

観客が想像力を働かせるとてもいい舞台でした。



そして、

父親役の辻さんの

太くて勢いのあるお声と


娘役の栗田桃子さんのどこか寂しげだけどテンポよく話される広島弁が


心地よく感じました。




さて、
舞台の後半は

前半の微笑ましさが消え、

原爆と言う悲劇に翻弄された親子の情景は


胸に迫るものがありました。



止むを得ず、父を見捨てて逃げた罪悪感から

『自分だけが幸せになってはいけない』と心を抑え込む娘に



『そんなことはない。 お前はおれによって生かされているのだかから幸せにならなくてはいけない』
(正確な台詞ではありませんが、こんな感じでした)

と幽霊となった父親が娘に必死になって言います。





放射能の恐ろしさがあまりにも身近になってしまったこの4か月。

天国から

井上ひさしさんはどんな思いでこの日本を眺めていらっしゃるでしょうか。








夫の蔵書から、チト拝借して

井上さんのインタビューを単行本化したものを読んでみました。



最後にこのメッセージで締めくくられていました、





100年後の皆さんへ、僕からのメッセージ






100年後の皆さん、お元気ですか?

この100年の間に、戦争はあったでしょうか?

それから、地球が駄目になるのではなく、

地球で暮らしている人間が、

駄目になってはいないでしょうか?



僕たちの世代は、それなりに

一所懸命に頑張ってきたつもりですし、

これからも頑張るつもりですが、

できたら100年後の皆さんに、

とてもいい地球をお渡しできるように、

100年前の我々も必死で頑張ります。

どうぞお幸せに。

                           井上ひさし
  


Posted by 薫子 at 20:30Comments(6)観劇